以前の記事で書かせていただきましたが、失敗の本質は日本人であれば必ず読んで欲しい名著です。
実は、オリジナルの「失敗の本質」を社内でずいぶん前に回覧したのですが、紛失したので改めて「「超」入門 失敗の本質」を購入しました。僕がオリジナルを購入した際は、この本は出版されていませんでしたね。オリジナルよりも分かりやすく、ビジネスに的を絞って書かれていたので、今回はこちらをおすすめさせて頂きます。
- 「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
- 鈴木 博毅 著
- ダイヤモンド社
概要
ざっくりいうと、「日本人は変わっていない」ということです。もう少し具体的に言うと、「日本軍と現在の会社は、組織として悪習を引き継いでいる」ということです。そうした背景から、日本人特有のメンタリティーを理解して、罠に陥らないようにするということがこの本の主旨だと理解しています。
このメンタリティーとは「転換点に弱い」と本書では指摘しています。なぜ転換点に弱いのかについては、日本企業は大局観に欠け部分のみに固執するためと説明しています。
もう少し分かりやすく言い換えると、日本人はゲームのルールを守って、そのゲームをひたすらうまくなるように訓練することは得意であるが、そのルールを自分の都合の良い方向に変更することは苦手であるということです。これは、何もビジネスに限ったことではなく、スポーツ競技でも指摘されていることですね。スポーツはルールが変更されれば周知されますが、ビジネスにおいては成功の指標や法則の変化が知らされることはありません。
最悪な結末としては、ルールが変わったことを気が付かずに、もしくは気付いていたとしても何を指標にすれば良いかが分からずに、昔の成功指標にすがるということでしょうか?
僕が働いている会社は戦前から続く古い会社なのですが、まさに上記が当てはまります。いまだに他社よりも単一性能を軸としてその性能を伸ばすことに固執しています。この成功体験は、高度経済成長期の指標だったものですね。。。
戦史とビジネス史
序章で記載されているのですが、日本軍と日本企業の共通する明暗のまとめが秀逸でした。
・日本軍
明:開戦序盤(1937~1941):領地拡大
暗:ミッドウェー海戦以降(1942~1945):敗北を分析できず
・日本企業
明:高度経済成長期(1970~1980年代):モノづくり大国ニッポン
暗:世界経済危機(1990~現在):製造業が国際競争で敗れる
上記の明暗の部分でルールが変わっていることが共通点ですね。つまり転換点で明暗が反転しているということですね。大枠だけを拾っていくと下記のように整理できます。
・戦史での転換点
航空機で戦艦を鎮めることができることを証明(日本)
航空機の旋回性能と個人技量を極限まで高めて1対1戦闘で優位(日本)
白兵銃剣主義(日本)
↓
伸びきった兵站を潰す(米国)
1対多での航空戦闘で組織で勝利(米国)
練度が低くても勝てる指標(レーダーやVT信管など)作り(米国)
重火力装備陣地(米国)
上記の例は一例なのですが、これを見ても米国が日本を具に分析して、勝てるルールを血眼になって探していることが伺えますね。
・企業史での転換点
良いものを安く作る技術の開発(日本)
製品単体の性能向上(日本)
↓
ソフトの互換性(米国)
ネットワーク効果・プラットフォームの重視(米国)
上記が実現された技術革新は何と言っても、PCとネットワークの普及でしょうね。この中核にあるのは、情報を大切にする姿勢だと思います。日本人って情報を軽視する風潮があるように思います。
どうして転換点に弱いのか?
本著では、学習方式の差と硬直的な組織運営とトップが正しい情報を受け取れないことで説明されています。
学習方式については、日本はシングル・ループ学習であると指摘しています。つまり、組織が考えた方法や手法を徹底させるという一方通行の仕組みです。
対して、米国はダブル・ループ学習であったと分析しています。組織はが考えた方法や手法を徹底させますが、現場からのフィードバックを受けてそれらを修正するという仕組みです。つまり、現実から学習していくということです。
当たり前のことなのですが、現在の日本企業でもこの当たり前のことができていない会社は多いのではないかと思います。僕の所属している会社組織もシングル・ループ学習です。ただ、上位者は間違いなくダブル・ループ学習であると考えています(信じ込んでいます)。実際に聞いてみたことがあるので、間違いありません(笑)。
どうすれば良いか?
大きな問題として、どうすれば良いかということは永遠の課題です。上位者でこれらの問題を真に理解している人がいれば、その人を味方につけることが最良でしょうね。
ただ、そういう信頼できる人がいない場合は難しいです。
なぜなら、戦略の失敗はいくら戦術を練っても挽回することはできないからです。つまり、戦略を練る人の素養がとても大切なのです。そして、一番の問題は、誰も戦略を練らずに、戦略があると思い込んでいるところです。つまり、ビジョンがないということです。
最良の方策は、皆さんが出世して会社の仕組みを良い方向に変えることだと思います。僕自身は、それしか道はないと考えています。
簡単ですが、以上が大まかな概要となります。
詳しいことが知りたい方は、是非書籍を購入してみてください。
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